子育てをしていると、どうしても「できないこと」に目が向いてしまうことがあります。
我が家の双子のうち、一人は自閉症です。同じ年齢の子ができることでも、うちの子には難しいことがあり、つい比べてしまうこともあります。
将来困らないように、少しでもできることを増やしてあげたい。そんな心配から、「今のうちに練習した方がいいかな」「もう少し頑張ってほしいな」と思うこともあります。
でも、これまで子育てをしてきた中で、なるべく大切にしたいと思っていることがあります。
それは、「できないと困るから」だけでなく、「できるようになったら、こんな嬉しいことがあるよね」という気持ちからも考えてみること。
いつもできているわけではありませんが、私にはその方が、少し気持ちが楽だったように思います。
今日は、そんな私の思いと、読んだあとにあたたかい気持ちになる、お気に入りの漫画について書いてみたいと思います。
読んだあとに、少し幸せな気持ちになる漫画
私が気に入っているのが、beth(ベス)さんの『自閉症のハルと家族の特上の日々』です。自閉症のハルくんと、その家族の日常を描いた漫画です。
自閉症の子どもとの暮らしについて描かれた作品には、日々の困りごとや悩み、家族の葛藤に共感するものもあります。同じような気持ちを知ることで、救われることもあると思います。
この本にも、大変なことや困ったことは出てきます。それでも、私の心に特に残るのは、家族の日常の楽しさや、ハルくんのかわいらしさ、思わず笑ってしまうような出来事です。
全体に、ほのぼのとしていて、あたたかい。私にとっては、読み終わったあとに少し幸せな気持ちになれる本です。
ハルくんには、うちの子と似ていると感じるところもあって、「ああ、わかるなあ」と思う場面があります。
もちろん、自閉症とひとくくりに言っても、性格や個性、得意なこと、苦手なことは一人ひとり違います。同じところに共感するとは限りませんし、本との相性もあると思います。
そのうえで、私にとっては、登場する子どもたちがかわいらしく、自然と笑顔になれるお気に入りの一冊です。漫画形式なので、私には気軽に手に取りやすいところも魅力です。
心配から始めると、苦しくなることもある
日々の生活や療育の中では、子どもが難しさを感じていることや、手助けが必要なことに向き合う場面があります。
自閉症の子どもを育てていると、将来のことだけでなく、毎日の暮らしの中で、いろいろな課題に向き合うことになります。一つのことを考えている間にも、また別の困りごとが出てきて、そのたびに「どうしたらいいかな」と考える。気持ちを落ち着けて先のことを思い描く余裕がない日もあります。
気持ちの持ち方を変えれば、目の前の大変さがなくなるわけではありません。心配したくてしているわけでもなく、日々の生活を何とか回すだけで精いっぱいになることもあります。「できたら嬉しい」と考えたいのは、そうした大変さがある中で、私自身も少しでも苦しくならずに子どもと向き合いたいからなのだと思います。
「これができないと、将来困るんじゃないかな」
「今のうちに、何とかしておいた方がいいかな」
私も、そんなふうに考えます。子どものことを思うからこそ、心配になりますよね。
できることが増えれば、本人の生活が楽になったり、楽しめることが広がったりすることもあります。困っていることを知り、必要な支援を考えることは大切だと思っています。
ただ、いつも「できないと困る」「このままだと大変」という気持ちから始めると、私自身、少し苦しくなることがありました。
子どもと過ごしていても、できたことを喜ぶ前に、次のできないことが気になってしまう。そんなふうに、心配が先に立ってしまうこともあります。
だからこそ、ときどき立ち止まって、「では、どうなったら嬉しいかな?」と考えてみたいと思っています。
「できたら嬉しい」を、一緒に思い描いてみる
例えば、言葉でのやり取りが難しいとき。「話せないと将来困るから、話せるようになってほしい」という心配だけでなく、
「いつか一緒にお話ができたら嬉しいな」
「好きなことや、やりたいことを、もっと教えてもらえたら嬉しいな」
そんなふうに考えてみる。
言葉で話すことが難しくても、身振りや絵、道具などを通して気持ちを伝え合えたら、それも嬉しいことです。私が楽しみにしたいのは、子どもの気持ちや好きなことを、今よりもっと知れるようになることなのだと思います。
日常生活でも、
「これができるようになったら、一緒に行ける場所が増えるかもしれないね」
「自分のやりたいことを、もっと楽しめるかもしれないね」
と、その先にある楽しみを想像してみる。
本人が頑張ることだけでなく、周りの手助けや環境を変えることで、楽になる方法も考えたいです。
何ができるようになるかに加えて、どうすれば本人が心地よく過ごせるか、好きなことを楽しめるか。そこを目指して支援を考える方が、私には合っていたように思います。
子どもに向ける気持ちも、大切にしたい
親がどんな思いで子どもに向き合っているかは、言葉にしなくても、表情や声の調子、日々のやり取りを通して、何となく伝わることがあるのかもしれません。
私自身、「できないと困る」「何とかしなきゃ」という思いが強くなると、その焦りが接し方ににじむこともあるように感じます。
だからこそ、心配だけでなく、「一緒にこんなことができたら嬉しいね」「楽しみだね」という気持ちも持ちながら、子どもに向き合えたらと思っています。
もちろん、心配したり、疲れたりする気持ちを隠して、いつも笑顔でいなければいけないということではありません。私にも、目の前のことで精いっぱいの日があります。
それでも、少し余裕ができたときに、困っていることの先にある「こうなったら嬉しい」を思い出す。そんなふうに、何度でも考え直せたらいいなと思います。
無理に前向きになりたいわけではない
これは、何でも前向きに考えればいいとか、できないことから目を背けようという話ではありません。今、本人が困っていることには対応したいですし、将来のために考えておきたいこともあります。必要な支援も、その子に合った練習も大切だと思います。
そのうえで、子どもの今や将来を、心配や大変さだけで思い描かずにいられたらと思います。
「今、ここで困っている。だったら、どうなれば本人が楽になるだろう」
「どんな手助けがあれば、楽しく過ごせるだろう」
そんなふうに考えていきたいと思っています。
思ったとおりに進まない日もありますし、私自身、いつもそうできているわけではありません。何かができるようになったときだけでなく、今、一緒に楽しめていることにも目を向けたいと思っています。
これは、誰にでも当てはまる子育ての正解というより、私がこれまでの経験の中で、大切にしたいと思うようになった考え方です。
大変さだけではない日常を、思い出させてくれる
私が『自閉症のハルと家族の特上の日々』を好きなのは、読んでいると、こうした自分の思いとも重なるものを感じるからかもしれません。
自閉症の子どもとの暮らしには、確かに大変なことがあります。でも、思わず笑ってしまうこともあるし、かわいくて仕方がない瞬間もあります。何でもない日常の中に、「幸せだな」と思える時間もあります。この漫画は、私にそんなことを思い出させてくれます。
著者のbethさんのInstagramの投稿も、時々楽しみにしています。少し落ち込んだときに読んで、ほっこりすることもあります。
悩みや葛藤をじっくり描いた作品を読みたい日もあれば、あたたかい日常に触れたい日もある。本に求めるものも、そのときどきで違うと思います。私にとってこの本は、ちょっと疲れたときにも手に取りたくなる一冊です。
そして私自身も、日々の生活の中で、
「こうなったら嬉しいね」
「こんなことができたら楽しいね」
そんな未来を子どもと一緒に思い描く気持ちを、これからもなるべく大切にしていきたいと思っています。


